インプラント周囲炎についていろいろ検索していると、とても不思議な事に気がつきます。どのサイトもおしなべて「原因はメンテナンス不足」とあります。
もちろんメンテナンスは大事です。インプラント周囲炎は自覚症状がありませんから、定期健診で歯科医院でチェックしてもらう必要があります。
しかしそのメンテナンスというのは、
- レントゲン撮影
- インプラント周囲のポケット測定と炎症の診査
- 噛み合わせバランスの調整(咬合調整と言います)
- 歯科衛生士による歯磨きチェックと指導
- 歯科衛生士によるクリーニング(PMTCと言います)
- ハギシリのチェック(マウスピースを入れる事もあります)
- 必要に応じて分解清掃
といった感じになります。これが一般常識です。
もしインプラント周囲炎が発覚すると、「あなたがメンテナンスに来ないからだ」とか「きちんと磨けていないからだ」と、100%患者さんの責任にされてしまいます。
たしかにその患者さんは、指定した期日にメンテナンスに来なかったのかもしれません。では、きちんと来ていれば、インプラント周囲炎は防げたのでしょうか?私はそんな簡単には行かないと思っています。
まず、インプラント周囲がきちんと磨ける形態になっていない、メンテナンスしやすい形になっていないことがたくさんあります。これは作る側の責任が大きい。
それから、インプラント本体の位置が悪く、同じく磨くことが難しい。これでは私たちが磨いてみても磨ききれません。位置や形態に無理があるケースが多いのです。
それから、栄養状態に問題を抱えている方がほとんどです。例えば…
- タンパク不足
- 脱水
- 糖質過多
- ビタミンB 群不足
- ビタミンD 不足
- 脂肪肝
- 血糖調整障害(糖尿病ほか)
- 高酸化ストレス
- スタチン系薬剤の服用
- 鉄欠乏
- 亜鉛欠乏
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 副腎疲労
- 低 EPA/AA
など、明らかに全身の代謝に問題があり、インプラント周囲炎を誘発しやすくなっています。これに糖質過多まで加わりますのでプラークは非常に付着しやすくなります。
また反応性の食後低血糖でハギシリが誘発される可能性も高くなっています。
そのようなところにまで歯科医院で指摘して行かないと、インプラントだけでなく、すべての治療の長期維持が難しい人は増える一方だと思うのです。体の中から支える努力が無すぎるのです。
では栄養の問題は、患者さんの責任なのでしょうか?それは言い過ぎでしょう。そもそも栄養の問題に気がついている人はまだ僅かであり、それは医療関係者も同様です。これはもう社会の責任です。
勘違いされては困るのですが、ではインプラントにせず、ブリッジや義歯にしたらよかったのでしょうか?そんなわけではありません。それぞれに別な問題を発症します。インプラントのおかげで咬合が安定し、残存歯が歯根破折から守られてることを忘れてはなりません。
しかし常識的なメンテナンスだけでは焼け石に水、もっと全身を診て行かなくては、歯の一本も守れない事を日々痛感します。