インプラント周囲炎の非外科的治療の中で、一番主役となるのがこのエルビウムヤグレーザーです。いや、外科的治療でも主役です。それほど重要なのがエルビウムヤグレーザーです。
一般に非外科的なインプラント周囲炎の治療で用いられるのが、抗菌薬と超音波の併用です。しかし歯周病の治療と同様に、バイオフィルムにガードされている細菌に薬は届きません。
さらにインプラントはネジ状になっているのに加え、表面がヤスリのようなザラ目になっており、そこに器具が到達することはありません。しかし細菌はそこに潜り込んでいます。そこで登場するのがエルビウムヤグレーザーです。
医療用レーザーには多くの種類がありますが、日本で認可されているレーザーの中で、唯一インプラント周囲炎に有効なのがエルビウムヤグレーザー(Er:YAG Laser)です。
このレーザーは水と激しく反応する性質で、主にムシ歯を除去するのに使われています。歯肉とインプラントの間で照射すると、激しい水の攪拌がおき洗浄されます。上のビデオはそれを顕微鏡を見ながら治療しているものを撮影したものです。
非外科的なので、歯肉を開いて器具を挿入しています。痛んだ歯肉の一部や異物も、レーザーで除去されます。しかしレーザーの先端がインプラントのネジ山にぶつかるので、深いところまでが届くわけではありません。
顕微鏡では除去しきれない痛んだ歯肉が残存していることも確認できます。本当に届かせようとすると、やはり積極的な外科的な治療に移行しなくてはなりません。
しかしそれができないという方には、現在最も有効な手段です。治療効果は限定的かもしれませんので、効果の程や持続期間を確認するためには、細菌検査が有効です。私たちは術前と術後3ヶ月の細菌検査をお勧めしています。
何事も「悪くなった」と気がついてからでは遅すぎで、特に歯の治療に綺麗に当てはまります。
インプラント周囲炎は起こさないことが最も大切ですが、なってしまった以上はメンテナンスの手順の上に治療がなくては長い効果は発揮されません。エルビウムヤグレーザーは確かに有効ですが、それを使って治療したからといって、今まで通りの生活習慣で良いというわけではありません。
逆に言えば、誤りに気がつき是正できた人が治るという事です。医療で最も大事なのはモノではなくコト、すなわち自身の行動です。それを十分ご理解いただいたうえで、この治療をお受けになられてください。効果は素晴らしいものなのですから、長く維持して行きたいものですね!