はじめに
インプラント周囲炎とは、非常に治癒困難な病態です。インプラント周囲の炎症をとり再生手術を成功に導くには、現状考えられるあらゆる手を講じなくてはなりません。
具体的には、体の「外側からの治療」と「内側からの治療」を徹底させ、細胞本来の活性度にできるだけ戻してから手術を行う必要があります。
しかし戻る事をいつまでも待っていたら、さらに進行してしまいます。そこで3ヶ月を目処に以下を徹底させたのち評価を行い、できれば再生手術を行います。
もちろん手術後も歯磨きや栄養改善を徹底させ、維持管理に努める必要があり、それができることが前提で処置が進みます。
インプラント周囲炎の治療は良好な結果をなかなかお約束できるものではありませんが、お互いの努力により可能な限りの工夫をし、最大限の効果を信じる前向きな姿勢が大切です。当診療室は努力に関しては保証いたします。
体の外側からの治療
- 徹底した歯磨き(インプラント周囲に新たに細菌が定着しないよう、口腔全体の良好な衛生が不可欠)
- 不良な人工物の撤去
- レントゲン・CT・ポケット測定などの通常の歯周病検査
- 最低30回の咀嚼(唾液量の増加・プラーク付着の低減・消化吸収補助)
- 咬合調整(負担荷重の軽減)
- 禁煙
- 細菌検査
- 抗生物質注入
- アマルガムの除去(代謝を止める水銀の除去)
- 耳鼻科検診(上咽頭炎・後鼻漏)
- 口腔内細菌叢改善のためのトローチ
体の内側からの治療
- 検査(必要に応じて以下の検査を行います。1〜3は必須です)
1. 食事記録
2. 血液検査(3ヶ月後に要再検査)
3. 毛髪ミネラル検査
4. 有機酸検査
5. 便総合検査
6. IgG食物アレルギー検査
7. 唾液コルチゾール検査
8. その他 - 食事改善
1. 砂糖フリー(全員に徹底していただきます)
2. 低炭水化物(特に糖尿病の方は強くお勧めいたします)
3. 高タンパク(胃腸の様子をみながら増量) 胃腸が弱い方はこちらをご参照ください
4. 優良脂質(EPA・DHA・亜麻仁・えごま など)
5. 高ビタミンミネラル
6. 最低30回の咀嚼(胃腸負担の軽減・消化酵素接触面積の増加・抗酸化等) - サプリメント(3ヶ月という短期間での改善を目指すため、栄養を効率的に補給するために用います。将来的にはサプリメントをできるだけ使わずに済む体質と食生活に改善してください)
1. 抗酸化(ビタミンC・ビタミンE・アスタキサンチン・水素)
2. ペプシノーゲン1が低い→塩酸ベタイン・グルタミン
3. ピロリ菌がいる場合→内科に除菌依頼 各種乳酸菌製剤で腸内環境保護
4. カンジダがいる→各種乳酸菌製剤 将来的には除菌をお勧めすることがあります
5. 低フェリチン→炎症が軽減されたら、ヘム鉄・フェロチェルなどを服用
6. 低マグネシウム→エプソムソルト・マグネシウムオイルスプレー・マグネシウム入り歯磨き剤・にがり
7. 低ALP→亜鉛・マグネシウム
8. n-3系脂質(EPA・DHA)
9. 栄養素が一点だけ不足していることはないので、最初からマルチビタミン製剤を適用します
10. 検査の結果、プロバイオティクスなど、その他のサプリメントを追加でお勧めすることがあります - その他
1. なぜインプラント周囲炎になってしまったのかを理解する
2. ストレスマネジメント
3. 睡眠 口呼吸防止
4. 軽い運動(スロージョギング・ストレッチ・筋トレなど)
5. 歯ぎしり対策(低糖質食・マウスピース・自己暗示法・マインドフルネス)
インプラント周囲炎治療 再生手術で行うこと
- インプラントの上に乗ってる冠と芯を外します(外した冠や芯は再利用できないことがあります)
- 麻酔をして歯肉を剥離し、骨から露出したインプラント周囲を顕微鏡で拡大観察します(軽症な場合は歯肉を剥離しないこともあります)
- チタン製のブラシで炎症歯肉を除去し、インプラント周囲をおおまかに清掃します
- エルビムヤグレーザーを用いて、インプラント周囲を清掃します
- β-TCPの粉を吹き付け、さらに細かいところまで清掃します
- 必要に応じてPDT(光殺菌)を行います
- 口腔内のどこかから骨を採取し、PRP(多血小板血漿)と混ぜたものをインプラント周囲に移植固定します
- 状況により歯肉の移植も行います
- 傷口を縫合します
- 術中は高濃度ビタミンC点滴の併用をお勧めいたします
- 再生手術についてさらに詳しい情報はこちらをご覧ください