歯科における採血の必要性と読み方

採血が終わっってホッとしているところ 総合案内

自由診療専門歯科では手術後の経過を良好にするために、予め細胞に適正量の栄養を供給しておくことが重要と考えます。私たちは手術後の痛みや腫れを少なくし、傷を早く治し、骨を早く再生するために、血液検査による手術前の栄養評価を積極的にお勧めしています。

以下に代表的な検査項目の意味・参考値・対策についてお知らせいたしますので、すでに検査をされた方は、できるものから実行されてください。特にインプラントを長く使っていくためには、正しい歯磨きに加え、これらによる抵抗力や免疫の適正化が重要です。

総タンパク

参考値:7.2~7.6 g/dL

私たちの体は目には見えませんが、日々部品の新旧交代が続いていており、これをターンオーバーと言います。そしてタンパク質は部品の原材料です。

歯肉や血管もその一つですが、実は骨もタンパク質(コラーゲン)から出てきています。この量が少ないと、原材料不足で弱いものしかできません

また免疫もタンパク質から出来ていますので、総タンパクが7.0以下の方は、摂取量・吸収量・分解排泄量のどれかに問題があるので、上げるよう食事や胃腸を改善をしましょう。

しかしいきなり摂取量を増やすと胃腸に負担がかかり逆効果になるので、同時に消化酵素剤を積極的に使い、食材中の成分を最大限有効活用できるようにしましょう。

改善を急ぐ場合は、プロテイン製剤やアミノ酸製剤の使用もお勧めいたします。

また食事は一口最低でも30回は噛んでから飲み込み、胃酸や消化酵素との接触面積を最大化し、未消化物を減らす習慣をつけましょう。未消化物は腸の中で腐敗し肝臓に取り込まれてしまうので、不調の大きな原因になります。

なお総タンパクの値は脱水や低代謝で擬似的に上昇しますので、参考値にあるからといって安心ではないので、必ず専門家の判断を受けてください。

25OHビタミンD

参考値:50~80 ng/dL

ビタミンDは骨の代謝・免疫・全身の細胞分裂に必須で、歯科では非常に有益性の高い栄養素です。測定するのは25OHビタミンDという項目です。

ビタミンDは本来なら日光に当たる事でコレステロールを原材料に皮膚で合成されるのですが、日光に当たる時間が多い人は現代では少なく、実際日本人の99%が不足していると言われています。

青魚や椎茸にもわずかに含まれてはいるのですが、必要量を食事だけで賄う事は不可能なので、これだけはサプリメントの使用を強くお勧めします。

亜鉛と銅

参考値:亜鉛 10.0 μg/dL 銅 9.0 μg/dL

亜鉛は細胞分裂・免疫・解毒に必須、銅は血管新生に必須です。両者は比率が大切で、亜鉛と銅の比率は10:9くらいが良いでしょう。

女性はホルモンの関係で銅が高くなり、イライラしやすくなる事があります。また過剰な銅は活性酸素の発生源となります。適正な亜鉛量を摂取する事で、銅の値を下げる事ができます。

亜鉛は牡蠣などに多く含まれますので、冬場は積極的に食べましょう。それ以外の季節では適宜サプリメントを使い、過不足が生じないよう定期検査で確認して行きましょう。

EPA/AA

参考値:EPA 120μg/mL EPA/AA 0.5~0.7

EPAはDHAと並んで、炎症のスイッチをオフにする重要な油です。

現代人には総じて不足しており、逆に炎症のスイッチをオンにするアラキドン酸(AA)という成分が過剰になりやすい食生活をしています。

EPAは歯周病やインプラント周囲炎で骨が極端に破壊されるのを防ぐ役目もあり、検査で低値だった方は青魚や亜麻仁油を普段から積極的に摂るようにし、適宜サプリメントにより数値回復を目指しましょう。EPAとAAの比は0.5〜0.7が適正です。

ALP

参考値:65~75 IU(IFCC)

ALPは一般的に肝臓の炎症を示す指標として用いられますが、ここでは亜鉛とマグネシウム量の評価として用います。どちらが不足してもALPは低値となりますが、亜鉛は採血で測れるのに対しマグネシウムは正確に測れないので、ALPを用いて推計します。

マグネシウムはカルシウムをコントロールし骨の再生に関与したり、エネルギー産生に必須です。

マグネシウムも亜鉛もよくある現代食の成分から欠落しており、またストレスで流出しやすい重要成分です。

血清鉄

参考値:90~100 μg/dL

鉄は赤血球が酸素を運ぶために必須ですが、エネルギー産生にも必須です。またコラーゲンを作るためには鉄・ビタミンC・タンパク質の三者が必須であり、骨や歯肉の素早い再生のためにも量を確認し続ける必要があります。また感染防止としても重要です。

鉄の評価には、血液中を流れる血清鉄と、その貯蔵量を反映するフェリチン(事項参照)を用います。

鉄は不足すると、エネルギー産生に使う分を減らし、赤血球へ優先的に配分されます。これは酸素の運搬が生命を維持するために最優先だからです。

したがって初期〜中期の鉄不足はまだ貧血ではないのですが、先に本人が気づかないエネルギー産生の低下が起きています。すなわち易疲労・精神不安・便秘・下痢・むくみ・肌荒れ・アザが治りにくいなど、よく不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる症状のベースとなりますし、この状態での手術はお勧めできません。

鉄不足が重度になるとやっとヘモグロビンという赤血球の値も下がり、一般的な内科ではここまで悪化してやっと鉄不足と診断されます。したがって初期の鉄欠乏を見落とさない項目が必要になり、それが次に説明するフェリチンです。

女性は生理で定期的に鉄の消失があるにもかかわらず摂取量が少ないので、生理があるうちは定期的な鉄の検査が必須です。また男性でも痔や消化管出血で鉄欠乏になる方も多く、男性の方が鉄欠乏に耐える力に劣るので注意が必要です。

なお鉄不足になると、氷や鉛筆を噛みたくなる精神状態になることで容易に発見できる事があります。

フェリチン

参考値:50~100ng/mL

上記の血清鉄とは別に、貯蔵されスタンバイしている鉄の指標です。生理がある日本女性は顕著に低下していることが判っていますが、対策はとんどされていません。

フェリチンは貯蔵鉄がないと下がる一方で、炎症があると上昇するので、両者が混在すると値が相殺され、一見普通の値に見えるので注意が必要です。他の検査や問診で炎症の程度を把握してから、貯蔵鉄量の評価します。

鉄は諸刃の剣で、上記の通り酸素運搬・エネルギー産生・コラーゲン生成などに必須でありながら、炎症を助長したり活性酸素の発生源になり、体を損傷させます。

そこで体は炎症や感染があるとわざと鉄の利用を制限します。腸からの鉄の吸収をストップさせ、体内では鉄利用量を低下させるために、血清鉄をフェリチンとしてしまい込み待機させます。つまりフェリチンは上昇します。内科でフェリチンをがんの指標に使うのは、このような理由から来るものです。

検査の結果、鉄が不足している状態では治療を延期せざるを得ない場合もあります。特に歯周病やインプラント周囲炎の治療は炎症を伴っているので、その改善は鉄不足の改善と並行して行わないと効果が表れません。ここは自由診療の歯科治療の要諦となる部分で、治療の初期から改善を強くお勧めする事となります。

鉄は肉・魚などの動物性タンパク質に多く含まれていますが、胃腸が弱く消化吸収能が落ちている方が多いので、前述の消化酵素剤との組み合わせがお勧めです。また最もコスパよく鉄が摂れるのはレバーです。週2回は中華店でレバニラ炒めを食べるのが良いでしょう。

その他の検査項目

一般的な検診や健康保険の内科での検査(標準医療)は、その数字が表す一面しか評価いたしません

例えば上記のフェリチンは一般的には炎症やがんの指標としてしか用いられません。しかし基礎医学(生理学・生化学)ではフェリチンとは鉄代謝を体が制限しているか、どれくらい鉄を貯蔵しているか、それらで値が変化すると習います。

私たちが手術前評価として用いるのは標準医療と基礎医学の両方で、最近では分子栄養学と呼ばれる分野でだいぶ普及してきました。しかし一般的な評価とはだいぶ異なることをご理解ください。

検査には上記の他にも、アルブミン・赤血球(MCVやヘモグロビンなど)・白血球(リンパ球・好中球など)・血小板・各種コレステロール・中性脂肪・AST・ALT・尿素窒素・HbA1c などが必要なのですが、これらはよくある分子栄養学の検査と同じ評価となりますので、ここでは割愛いたしました。

検査結果を人生に活かす

血液検査による栄養〜代謝の評価は一回の採血で解るわけではなく、何かしら改善策を実行していただいた後の2回目や3回目で見える変化が重要です。

改善はお一人ではなかなか難しいと思いますので、当診療室では専属のカウンセラー(本業は歯科衛生士)をご紹介し、ライフスタイル全般の改善による歯や骨の長期維持をお勧めしております。

2回目の採血をしていない・採血後の食事や生活を何も変えていないという方たいへん多いのですが、とてももったいない事ですね。ぜひ検査結果を人生に活かしていただきたいのです。

自分自身の現在地を知ることは、とても楽しいことですし、困難な時代を乗り切るためにも必須と思います。検査やカウンセリングはいつでも可能ですので、ぜひお申しつけください。

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